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漢方的・猛暑の夏を乗り切る智恵(その2)

2018.08.03 | Category: 漢方医学の智恵



こんにちは!
大阪天満 かわかみ吉祥堂
院長の川上です。

前回、「夏の身体は外熱内寒」とお伝えしました。そこで、暑邪の特徴と身体への影響から、暑さ対策について考えてみましょう。
 
【暑邪の特徴】
暑邪は「人体にダメージを与えるほどの夏の暑さ」ということを前回お伝えしました。この「人体にダメージを与えるほどの」という表現がとても曖昧で、暑さは全ての人の身体に悪影響を及ぼすのではありません(伝染性が非常に強く致死率が高いものを癘気(れいき)と言いますが、ここでは省きます)。
 
人それぞれのお身体の状態によって、暑さについていけず人体に何らかのダメージを受けた場合、その暑さ(暑気)を「暑邪」と表現します。暑気以外の外界の気候変化である風寒湿燥火(六気)も同様で、人体にダメージを与えるような六気を六淫(りくいん)と言います。
 
その前提で暑邪には、以下の特徴と身体への影響があります。
 
【暑邪の特徴と身体に与える影響】
①陽邪で、火病に属し、身体上部から損傷する
②暑邪は気血水を損傷しやすい
③湿と一緒になりやすい
④暑邪が甚だしいと心営に陥り、生風することがある
⑤ときに冷えの症状が現れる

 
①陽邪で、火病に属し、身体上部から損傷する
暑さは上から襲ってくるので、まず人体の上部を損傷します。身体症状として、「めまい、目赤頭痛、顔面が赤くなる」、五臓でいえば、肺が最も上部にあり、肺衛・肺気・肺津(津は水の一種)を傷りやすい。このときの症状は、「若干の風を嫌がる(微悪風)、口が乾く、やや体が熱い、空咳、胸が煩わしいなど」。
 
また肺を通り越して胃の領域である陽明気分に侵入することがあります。症状は、「高熱多汗、口が渇いて水をよく飲む、顔面紅潮など」。
 
②暑邪は気血水を損傷しやすい
暑邪は陽邪なので、その開泄性により、毛穴が開けっ放しになって、発汗によって気と水が漏れやすくなります。更に、漢方医学では「汗血同源」と言って、汗と血は元は同じ水を源としていると考えています。従って、多量の発汗は血にも損傷の影響が及びます。
 
これらによって気虚・血虚・陰虚(気血水エネルギーの損傷)となり、多くは気陰両虚という状態を呈します。臓腑への影響としては、肺胃の気水の損傷と心腎の真陰の損傷という2方面に及びます。
 
症状として、「だるい(特に手足)、息切れ、しゃべるのがおっくう、意識がぼんやりする、口乾・口渇」
 
湿と一緒になりやすい
四方を海に囲まれている日本という土地柄、湿を挟みやすい。そのため、消化器の虚弱により体内に水湿の邪気が溜まっていると(脾虚湿盛)、その②でもお話しました様に、余計に暑邪に中り易くなります。
 
④暑邪が甚だしいと心営に入って、生風することがある
炎天下の日に、肉体労働に従事したり、外に長くいたりすると、暑邪がいきなり心営に入ることがあります(直中)。心営とは、本来、心臓の血流運行作用のことです。そこから転じて熱性の病の病位の最も深い段階に進んだ状況を言い表します。
 
そして心竅(意識と関連する心にある穴)を閉ざすと、「突然倒れ、意識障害」となります。このとき、「頚部のこわばり、手足のケイレン、背中が反り上がるといった生風(肝風内動)」の症状を併発することがあります。
 
⑤ときに冷えの症状が現れる
熱帯夜だからといって、クーラー・扇風機の付けっぱなし、あるいはそれらが無くても、裸のまま寝ると、夜の陰気により寝冷えとなって、寒湿の邪に傷つけられます。あるいは冷飲食により、体内から寒湿の邪が形成されます。明代の名医張景岳先生は、①~④の条件で暑邪に中たることを陽暑、⑤の暑邪に中ることで寒湿の邪を受けることを陰暑と表現しました(③の要素が大きくなると、陰暑になりやすい)。
 
そして、浅井貞庵先生は『方彙口訣』の中で、次の様に夏の暑さが陽気そのものを傷ることがあると仰っておられます。
 
人身の陽気打たれて反て此の身内の冷ゆることあり。・・・炭火を太陽の前へ出す時は炭火の勢力、太陽の劇勢に打たれて恰(あたか)も黒炭(きえすみ)の如くなる。是人の陽気が世界の暑気に打たれると同様なり。

・・・泄(も)れ出る陽気が発し過ぎて表の陽気が乏しくなるなり。暑傷気と有りて世界の火気に人身の陽の打たれるあり。
 
本来、人体の陽気を養うはずの暑気が、一定の条件下では、時に陽気を傷つけることがあるという貞庵先生の見解を、漢方医学の治療者として頭の片隅に入れておくべきでしょう(暑邪により陽虚まで陥る場合、その前に一気に著しい傷陰が起きたからだと愚考します)。

(その3)に続く

漢方鍼灸 妙見活法 大阪天満 かわかみ吉祥堂

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院長川上 哲広妙真
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