こんにちは!
大阪天満 かわかみ吉祥堂
院長の川上です。
前回、【暑邪の影響を減らす身体作り】として、ポイントとして3つ挙げました。
何らかの意識を失う兆候がみられたら、暑邪の影響が身体の深いところの営血分(Ⅲ度)に及んでいる可能性が高いので、まず医療機関に行くべきなのは言うまでもありません。
そこまでに至らず、暑邪のダメージを受けた後、ご自身でできる対策として食養生がございます。今回、暑邪によるダメージの段階別に、お勧めの食材と、その他の養生の注意について、以下に挙げます。
【陽暑】
①暑邪が衛分から気分に入る(Ⅰ~Ⅱ度)
症状として、「身体が熱い、顔面が赤い、汗がやたら出る、口が渇き水分を欲しがる」など。
身体にこもった余分な熱を冷ます(清熱)食材:西瓜、苦瓜(ゴーヤ)、メロン、レンコン、緑豆、冬瓜、少量の塩、びわ、セロリ、キュウリ、アサリ、ワカメ
その他:うわごとを発せば、意識障害が起きるⅢ度の手前なので、安全を期して医療機関にかかって下さい。
②暑邪により気陰両虚となる(Ⅰ~Ⅱ度)
症状として、「力が抜けただるい(特に手足)、食欲が無い(食べる元気さえない)、頭がボーッとした感じのめまい、顔や手足のほてり、口の渇き」。この気陰両虚は、「虚多無邪、春夏劇」つまり、元々何らかの虚弱体質の方が、暑さによってエネルギー不足が進行することで陥りやすい段階です。
気を益す(益気)食材:人参、お米(お粥、重湯)、ナツメ、カボチャ、鶏肉、カツオ
余分な熱を冷まし、渇きを潤す(清熱潤燥)食材:トマト、オクラ、山芋、白菜、豆腐、レンコン、梨、リンゴ、メロン、パイナップル、麦茶、緑茶
汗が漏れすぎないように皮膚の毛穴を引き締める(止汗)食材:梅、レモン、五味子茶、
その他:動作が負担になる段階なので、まずは涼しい部屋での安静が第一です。
③暑邪に湿が挟む(Ⅰ~Ⅱ度)
症状として、「身体が重だるい、頭が重く時にめまい、むくみ、お腹がつかえて食欲が無い、大小便がスッキリ出ない、吐き下し、午後から微熱」
余分な熱を冷まし、水を巡らす(清熱利湿)食材:冬瓜、ナス、レタス、昆布、海苔、ひじき
消化器の水を巡らす(利水)食材:生姜、ミョウガ、麦茶、トウモロコシ、アズキ
消化器の気を巡らす(利気)食材:大根、シソ、フスマ(小麦の糠)、麦ご飯(大麦)、サンザシ、トウモロコシ、ピーマン、キャベツ、ミント、パセリ、バジル
その他:普段、何らかの消化器症状をお持ちの方がかかりやすい段階です。①②を併発していないで身体を動かせるようであれば、入浴や軽運動により、ドバーッではない、ほんのりとした汗をかくことをお勧めします。
上記の①から③の要因は単独で、あるいは混合で症状が現れることがあるので、その診極めがとても大切です。また夏バテ、漢方医学でいう疰夏・注夏の多くは②あるいは③の形を呈しています。
【陰暑】
①②のエネルギー消耗段階、あるいは③の湿気が体内に溜まっている状態から、冷房による冷えや過度の冷飲食によって、③の消化器症状に加え、ときに寒気や発熱といった風邪症状が併発します。ひどいときは、食中毒様の吐き下しがメインとして現れます。
この段階であれば、食材で対処するよりも、しっかりとした漢方的な診立てを行う鍼灸院、薬局、医院にかかることをお勧めいたします。
【まとめ】
以上、5回にわたり夏の養生法についてご説明しました。このシリーズ掲載にあたり、暑邪についての理解が一層進んだことで、鍼灸の臨床で夏特有の症状の治療が行いやすくなりました。
また私は元々、下痢をしやすく、夏の後半に食欲不振を経過した後の秋になると、深夜、痰が気管支につまって喘息発作が出やすくなります。夏の養生(特に食養生)をしっかり行うことが、秋の喘息発作防止に繋がることを改めて確認できました。
あと数週間もすれば、この暑さが和らいでいくことでしょう。それまでに、皆さまが少しでも快適な残暑をお過ごし頂ければと思います。